熱性けいれんに関する朝日新聞の記事を転記しました。  
ひきつけを起こし、あわてて救急車を呼んでしまう
親御さんは多いと思います。でも、熱性けいれんの殆どは
心配ないのです。参考になさってください。
   
 
熱性けいれん 親は冷静に 
 
 
 

 こどもが急に熱を出すと親は心配になる。手足を震わせたり、手足がつっぱったりする「熱性けいれん」を起こせばなおさらだ。だが、発熱に伴うけいれんの多くは短時間でおさまるという。学会は昨年、ガイドラインを改め、軽傷ではむやみに投薬や検査をせず、重症例をきちんと見分けるよう呼びかけている。
  


 

 大阪府枚方市の女性会社員(33)は長男(2)の熱性けいれんを3回経験した。1歳10ヶ月の時に体温が38.9度まで上がり、かかりつけ病院に行く準備中、倒れた。体が硬直して震える長男を見て「死んでしまうのかと思った」と振り返る。
 119番の後、救急車に乗るまでにけいれんは治まった。搬送先の病院では「熱性けいれん」と診断された。「聞いたことはあっても目の当たりにすると怖かった」
 熱性けいれんは概ね38度以上の発熱に伴って起きるけいれん発作。発熱の原因はインフルエンザや突発性発疹などさまざま。主に6ヶ月から5歳までの乳幼児にみられ、20〜30人に少なくとも1人は発症する、珍しくない症状だ。
 名古屋大の夏目淳教授(小児科)によると、以前はけいれんを起こした子どもに対しては、同様の症状を示す細菌性髄膜炎を疑って髄液検査をしていた。
 だが、近年はワクチンの普及で細菌性髄膜炎の患者は減少。髄液検査は体を傷つける上、けいれんを押さえる薬にはふらつきなどの副作用があるといい、夏目さんは「経過が良好な子どもにまで、『何でも検査、薬』というのは不利益もある」と指摘する。こうした背景から、日本小児神経学会は2015年、熱性けいれんの診療ガイドラインを約20年ぶりに改訂した。
 ガイドラインの策定委員長を務めた夏目さんによると、けいれんが5分以内に治まり、他の病気を疑わせる様子がなければ、詳しい検査や薬は基本的に必要ないという。多くの場合、医療機関に着くころには子どものけいれんが治まっているので、付き添いの親からの情報が鍵となる。
 具体的には、▽痙攣に気付いてから治まるまでの正確な時間▽痙攣しているのは全身か、左右差があるかどうか▽治まった後、目が合うなど意識が回復しているか、などが注意するポイントだという。
 枚方市の女性は長男が3回目の熱性けいれんを起こした際、時間を計ると2分だった。経過は良好で、元気に通院している。
 田辺こどもクリニック(大阪府枚方市)の田辺卓也院長は「実際より長く感じられると思うが、的確な治療や対応に結び付くので、できるだけ詳しくみておいてほしい」と話す。
 


 

 


 熱性けいれんは、直面した親の不安が大きい。夏目さんは「発熱を恐れるあまり、予防接種を避けるのは望ましくない」と説明する。親と医師の双方に正しい理解が必要だという。

 ガイドラインによると、熱性けいれんの再発率は30%程度で、再発した場合も成長や学力などには影響しない。

 また、熱性けいれんは多くの場合は一過性で、再発しても、てんかんの原因となることはない。てんかんを持つ子供が、熱性けいれんを機に診断される場合はあっても、移行するわけではなく、因果関係はないとされている。

 一方、けいれんが短期間で繰り返し起きる場合は注意が必要だ。田辺さんは熱性けいれんについて「基本的には問題のない病気という認識のもと、少ない重症例を見落とさないという視点が重要だ」と指摘。ガイドラインでは、重症が疑われる際の対応も示している。

 5分以上の痙攣続いたり、24時間以内に発作を繰り返したりといった場合は、抗けいれん薬を使う。自宅で高熱が出た際には、けいれん前に座薬を入れることもある。脳症などを起こしていないかを調べる、頭のMRI検査や脳波検査などを推奨している。夏目さんは「座薬以外の薬も2014年に適応になっており、治療の幅は広がっている」と話している。
  


 

 

 
・おおむね38度以上の発熱を伴う
・生後6カ月~5歳に多い
・7割は再発せず。再発しても成長、学力には影響せず
 
手足の震え
体が硬直するなど



症状のチェック点
 
☐ けいれんの持続時間        5分以内かどうか
☐ 体の左右で違いはあるか      左右対称かどうか
☐ 治まった後、意識の回復程度は   目が合うかどうか
 
  受診時にはできる限り医師に詳細を!
 
重症の場合は… ・脳波やMRIの検査
           ・抗けいれん薬による治療



朝日新聞 2016年1月12日